〔問 4〕 区分所有する者が複数名である甲マンションにおいて、区分所有者Aが管 理者である場合の管理者の立場等に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の 規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、やむを得ない事由があるときでなければ、管理者としての事務を第三 者に委任することはできない。
2 Aは、管理者としての事務を処理するについて費用を要するときは、管理組 合に対して事務処理費用の前払いを請求することができる。
3 Aは、甲マンションの敷地が区分所有者の共有又は準共有に属しない場合に は、敷地に関して、これを保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた 行為をする権限を有しない。
4 Aがその職務を行うため自己の過失なくして損害を受けたときは、Aは、委 任の規定に従い、管理組合に対してその賠償を請求することができる。

解説)
落とし穴:区分所有法の管理者は、民法の委任の定めが適用されること。 復委任は、やむを得ない場合と、委任者の承諾があれば復委任できるという民法の正確な知識
選択肢1
管理者の権利義務は、民法の委任で定める受任者に従うものとされています。(区分所有法28条)
改正民法の第644条の2の第1項で、
「受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない」
と定めていますので、誤り。
選択肢2
民法649条によると、
委任者は、受任者の請求により、費用を前払いしなければなりません。
正しい。
選択肢3
管理者は、区分所有者の共有または準共有の敷地を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為を行う権限を有するので、そもそも区分所有者の共有でも準共有でもない敷地についての権限はありません。
正しい。
選択肢4
民法650条3項によると、
受任者は自己に過失なく、委任事務を処理するにあたって損害を受けたときは、委任者に損害賠償を請求できます。
正しい。
以上のことから、選択肢1が正解になります。