〔問 16〕 甲マンション 707 号室を所有するAは、同室をBに賃貸する旨の契約(こ の問いにおいて「本件賃貸借契約」という。)を結び、同室をBに引き渡すととも に、Bから敷金の交付を受けた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及 び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bが交付した敷金は、本件賃貸借契約の存続中にBがAに対して負担する未 払賃料債務だけでなく、本件賃貸借契約終了後、707 号室をAに明け渡すまでにBがAに対して負担する不法占拠を理由とする賃料相当額の損害賠償債務を も担保する。
2 本件賃貸借契約が終了し、AがBに対して 707 号室の明渡しを請求した場合 には、Bは、Aに対し、敷金の返還との同時履行を主張して同室の明渡しを拒 むことができる。
3 Bが賃料の支払を怠っていることから、AがBに対してその賃料の支払を請 求した場合には、Bは、Aに対し、敷金をその賃料の弁済に充てることを請求 することができる。
4 Aが 707 号室をCに譲渡して所有権の移転登記をした後、本件賃貸借契約が 終了して、同室がBからCに明け渡された場合には、Bは、Cに対し、敷金の 返還請求権を行使することができない。

解説)
落とし穴:敷金の知識。敷金は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物が返還されたら、賃借人の賃借に基づく未払の債務の残額を差し引いて、賃貸人が、賃借人に返金します。(民法622条の2第1項)
選択肢1
賃貸借契約終了しても、707 号室をAに明け渡してから、敷金は返還されます。敷金から明け渡し前までに発生した不法占拠を理由とする賃料相当額の損害賠償債務の金額が返還されます。
正しい。
選択肢2
明け渡しが終わってから、敷金が返金されます。
正しくない。。
選択肢3
賃貸借が終了してから、敷金は返金されます。
正しくない。
選択肢4
賃貸人の地位が移転した場合、敷金の返還にかかる債務は、譲受人に継承されます。(民法605条の2第4項))Bは、Cから敷金返還を請求できます。
正しくない。
以上のことから、選択肢1が正解になります。
何がされたら、敷金が返還されるのか?契約終了でなく、明け渡した時であることを、理解することが正解への鍵です。