令和3年マンション管理士試験問題と解説 問9

令和3年度(2021年11月実施)過去問解説

〔問 9〕 マンションの建替え決議及びその後の手続に関する次の記述のうち、区分 所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 建替え決議があったときは、集会を招集した者は、建替え決議に賛成しな かった区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建 替えに参加するか否かを回答すべき旨を、決議の日から2月以内に書面で催告 しなければならない。

 2 建替え決議に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により建替えに参加 する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各 買受指定者(区分所有法第 63 条第4項に規定する買受指定者をいう。この問 いにおいて同じ。)(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議の内容によ り建替えを行う旨の合意をしたものとみなされる。

3 建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替え に参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又は買 受指定者は、建替え決議で建替えに反対する旨の投票をし、その後建替えに参 加するか否かの書面による催告に対し無回答で催告期間を終えた区分所有者 (その承継人を含む。)に対して、催告期間満了の日から2月以内に、区分所有 権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

4 売渡請求権の行使により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、正当 な理由もなく建替え決議の日から2年以内に建物の取壊しの工事が着手されな い場合には、この期間の満了の日から6月以内に、その区分所有権又は敷地利 用権を現在有する者に対して、買主が支払った代金に相当する金銭を提供し て、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。

解説)

合格へのポイント

読むだけで疲れてしまいそうな長文です。何度も読み返すと時間がかかってしまうので、区切りをつけて、一回読んで意味がわかるようにしましょう。

建替えに関しては、テキストの終わりのほうにありますから、対策は手薄になりがちです。招集通知の発送時期から、建替え決議、賛成しなかった者への売渡請求、工事着手が遅れた時の再売渡請求まで、一連の流れが決まっています。いつから(起算日)、と、いつまで(2ヶ月、2週間、6ヶ月)が決まっているのは、決めておかないと、遅れがち、でも遅れると面倒なことに悪くなるので、法律で歯止めをかけているわけです。時系列にまとめた図を使って、一度覚えてしまったら、もう得点源にしてしまいましょう。

選択肢1

区分所有法第63条1項です。

「建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。」

建替え決議をしたのですから、建物の取り壊しが決まったわけです。決議に賛成した者は、建替えの準備をすすめなければなりませんから、決議に賛成しなかった者に、建替えが決まったから、建替えに参加するかの意思確認をしたくなるはずです。遅れがちな手続きではないので、選択肢のように2ヶ月以内の制限を設ける必要はありませんね。

正しくない。

この選択肢1が正解とわかれば、後の選択肢は、全て正しいことを確認するだけです。

読むのに疲れそうだったら、読まずに一度離れて、問題文の文字数が少ない、設備関係の問題を解いてから、戻ってくると時間を効率的に使えます。

選択肢2

区分所有法第64条の条文そのものです。

第64条 建替え決議に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす。

正しい。

選択肢3

区分所有法第63条第4項と5項の条文です。(条文省略)

建替えに参加するかどうかを問われても、何も答えなかったら、どうしたらいいでしょうか?

そのまま建替えの手続きをすすめると、後で反対だと言われて、計画がとん挫してしまうかもしれません。そうなったら、多額の資金をかけて、建替えをすすめている多数の人にとっては都合が悪くなります。

そこで、区分所有法で、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者に対して、建替えに参加するかどうかを催告し、その回答期限は2か月以内としています。また回答のない場合には、建替えに参加しないとみなす規定を設け、建替えに参加しない者に対して売渡請求ができるという歯止めをかけています。

正しい。

選択肢4

区分所有法第63条第7項の条文です。

選択肢3にあるように、建替えに対して賛成でも反対でもなかった者にでも、売渡請求ができてしまうほど、建替えが進みやすいように規定されています。

建替えするからという理由で、建替えに賛成していないのに売渡す羽目になったのに、いつまでも建替え工事をしなかったら、売渡請求された者にとっては、話が違うと言いたくなるでしょう。

そこで、決議した以上、決議した日から2年以内に建物の工事が着手されなかったら、買主に支払った金額を提供して、売渡し請求ができると、法律で定めています。

見方を変えると、決議した日から2年以内に建物の工事を着手しなければならないから、逆算して、建替えに参加しない者に対する建替え参加の意思の回答期限を設けたり、無回答なら参加しないとみなしたりなどと、建替えしやすくなるように決めることが許されるのと言えますね。

正しい。

以上のことから、選択肢1が正解になります。

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