〔問 12〕 甲マンション 203 号室を所有するAは、Bとの間で、同室をBに売却する 旨の契約(この問いにおいて「本件売買契約」という。)を結んだ。本件売買契約 の代金は同室の時価をかなり下回るものであった。この場合に関する次の記述のう ち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 AがBの詐欺によって本件売買契約をする意思表示をしていた場合であって も、Bの詐欺によって意思表示をしたことについてAに過失があったときは、 Aは詐欺を理由として自己の意思表示を取り消すことができない。
2 Aが第三者Cの詐欺によって本件売買契約をする意思表示をしていた場合に は、Bがその事実を知っていたか、知ることができたときに限り、Aは詐欺を 理由として自己の意思表示を取り消すことができる。
3 AがBの強迫によって本件売買契約をする意思表示をしていた場合であって も、Bの強迫によって意思表示をしたことについてAに過失があったときは、 Aは強迫を理由として自己の意思表示を取り消すことができない。
4 Aが第三者Dの強迫によって本件売買契約をする意思表示をしていた場合に は、Bがその事実を知っていたか、知ることができたときに限り、Aは強迫を 理由として自己の意思表示を取り消すことができる。

解説)
合格へのポイント
民法の詐欺と強迫の問題です。だまされるのと脅されるのは、取り消せる状況に差があることに注意しましょう。強迫された場合の保護が厚くなっています。数年前に改正がありましたので、改正前の民法で勉強していた場合には、混同しないように注意が必要です。
選択肢1
詐欺された意思表示には、ついうっかり信じてしまった過失があります。そこで過失があったら、意思表示を取り消せなかったとしたら、取り消せなくなってしまいますね。
正しくない。
民法第96条の条文は以下の通りです。
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
選択肢2
民法96条2項です。
第三者に詐欺された場合の意思表示の取消は、相手が第三者に詐欺されたことを知っているか、知ることができた場合にのみ、取り消すことができます。
正しい。
選択肢3
選択肢1と似ています。たとえ強迫された者にすきや落ち度があったとしても、強迫された意思表示を取り消せなければ、脅して強迫した者を法律で保護することになってしまいます。
正しくない。
選択肢4
選択肢2と似ていますが、強迫された場合は、詐欺された場合よりも、保護されるべきです。民法96条2項、3項によって、強迫されたことを知らなかった相手に対しても、取り消せます。
正しくない。
以上のことから、選択肢2が正解になります。
