〔問 15〕 甲マンションの 101 号室を所有するAが管理費を滞納した場合の遅延損害 金に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 甲マンションの管理規約に遅延損害金の利率の定めがない場合、Aが令和2 年1月末日を支払期限とする管理費を滞納したときは、Aは、令和2年2月1 日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
2 甲マンションの管理規約に遅延損害金の利率を年 10%とする定めがある場 合、Aが令和2年7月末日を支払期限とする管理費を滞納したときは、Aは、 令和2年8月1日から支払済みまで年 10%の割合による遅延損害金の支払義 務を負う。
3 甲マンションの管理規約に遅延損害金の利率の定めがない場合、Aが令和3 年1月末日を支払期限とする管理費を滞納したときは、Aは、令和3年2月1 日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
4 甲マンションの管理規約に遅延損害金の利率を年1%とする定めがある場 合、Aが令和3年7月末日を支払期限とする管理費を滞納したときは、Aは、 令和3年8月1日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払義務 を負う。

解説)
合格へのポイント
改正民法の施行日は令和2年4月1日です。この日を境に遅延損害金の計算が変わります。
どのように変わるかをわかっておかないと、下手に迷って時間を無駄にしてしまいがちな問題です。
旧民法を知っている受験生には、改正民法の知識を身につけることを促し、改正民法から勉強した受験生にも、旧民法も知っておくことを求める問題です。昨年も15問は改正民法関係で、売主の担保責任が問われていました。
選択肢1
令和2年2月1日からの遅延損害金の計算は、遅延になった時点が令和2年4月1日より前ですので、旧民法での計算になります。法定利率は年5%です。
平成29年法律第44号附則 民法の一部を改正する法律(平成29年6月2日)第17条3項「施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による」
正しい。
選択肢2
令和2年8月1日から支払い遅延になりますが、年利10%であることを甲とAで合意しているので、年利10%で計算します。
民法第404条1項で、以下のように定めています。
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
年利10%であることを甲とAで合意しているので、別段の意思表示があります。そこで、年利10%となります。
正しい。
選択肢3
令和3年7月1日から支払い遅延になりますので、改正民法が適用されます。
改正民法第404条2項によって、年利3%になります。
(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
正しい。
選択肢4
令和3年8月1日から支払い遅延になりますので、改正民法が適用されます。年利1%であることを甲とAで合意しているので、1%で計算します。改正民法第404条1項
。
正しくない。
以上のことから、選択肢4が正解になります。
